心理学用語
身体症状症および関連症群
somatic symptom and related disorders
「病は気から」という言葉のように、体の異常(身体症状)と人の心は深くかかわっています。
「身体症状症および関連症群」は、体の異常などの身体症状がかかわる精神疾患のカテゴリーです。
▼出典:「DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引」
今回はこの「身体症状症および関連症群」に含まれる疾患、
この記事でわかること
- 身体症状症
- 病気不安症
- 変換症(転換性障害)
要因・援助・DSM-5の変更点
を解説していきたいと思います。
身体症状症
心理学用語
身体症状症
Somatic Symptom Disorder
「身体症状症」とは、身体症状に関連した過度な思考や感情・行動がみられ、その苦痛をともなう身体症状が持続する疾患です。
体に不調に対して過剰に深刻に考え、不釣り合いな不安をいだく精神的な疾患になります。
身体症状症では、その不安のため、またはその不安の解消のため、過度な時間と労力を費やします。
身体症状症の要因
身体症状症の要因には、遺伝的要因や生活上のストレスといった環境的要因の両方が関係していると示唆されています。
身体症状症への援助
認知行動療法やリラクセーション法、薬物療法などが行われます。
身体症状症では、症状の器質的異常が認められないこともあります。
そのため、患者さんが身体的原因の究明と治療を期待する場合、治療者がその期待に応えることは難しく、治療関係が困難になる場合があります。
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DSM-5での変更点
DSM-5から身体症状症についての考え方に変化がありました。
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DSM-Ⅳでは、医学的に説明できない体の症状に対するとらわれという定義でした。
しかし、これでは体の問題なのか、心の問題なのかという二元論的な話になってしまうという問題がありました。
「メンタルが原因だから」、「医学的に異常はないから」と言われすぐさま精神科を紹介される。
そこでDSM-5では、身体症状に対する「反応」として過度な不安がある場合に、疾患が診断がされるような改善がなされました。
そのため、たとえば気管支喘息やアトピー性皮膚炎などの医学的にも説明できる身体疾患であっても,その症状に対する不安や極端な思考が持続する場合は、身体症状症と診断されるようになっています。
参考文献
参考:医学会新聞
「とらわれ」から考えるリエゾン的身体症状症
病気不安症
「病気不安症」は、身体症状は存在しない、もしくはごく軽度であるにもかかわらず、重篤な病気にかかっている、またはかかりつつあるという「とらわれ」を引き起こす疾患です。
この不安と「とらわれ」が、不釣り合いなもので日常生活に支障が生じている状態になります。
病気不安症では、病院の検査に頻繁に行くタイプと、逆にめったに受けないという回避行動を示すタイプに分けられます。
転換症(転換性障害)
「転換症(転換性障害)」は、身体や神経系に異常がないにもかかわらず、運動症状や感覚症状を訴える病態です。
転換症(転換性障害)は、以前は「転換型ヒステリー」と呼ばれていたものに相当します。
フロイトが述べた「ヒステリー」とは、解決されない現実の問題によって心理的葛藤が生じ、問題への直面を回避するように何らかの症状があらわれる現象のことです。
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「ヒステリー」において、手足のマヒや失声、視野搾取など運動・感覚機能に関する症状が出るものを「転換型ヒステリー」といいます。
そうではなく、意識喪失や記憶障害など精神機能に関する症状がでるものは、「解離型ヒステリー」と呼びます。
つまり、不安や葛藤が身体症状(運動・感覚)に転換されているのがこの疾患ということになります。
まとめ
最後にもう一度「身体症状症および関連症群」のポイントをまとめます。
身体症状症および関連症群まとめ
身体症状症および関連症群とは、
- 身体症状がかかわる精神疾患のカテゴリーです。
代表的な疾患は、
- 身体症状症
- 病気不安症
- 変換症(変換性障害)
身体症状症は、
- 身体症状が存在し、病気に関する極めて高い不安をもつ。
病気不安症は、
- 身体症状が存在しない、もしくは軽度だが、過度で不釣り合いの不安をもつ。
変換症は、
- 心理的葛藤や不安が、手足のマヒや失声、視力の喪失など身体症状に転換されている。
以上、「身体症状症および関連症群」についての解説でした。
ご参考にさせていただいた書籍
本日がみなさまにとって、すばらしい一日でありますように。