心理学のキホン

DSMをわかりやすく解説。DSM以前の診断やICDとの違い。

2021年10月13日

DSM-5マニュアル

心理学用語

Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders

DSM

DSM」とは、アメリカ精神医学会による「精神疾患の分類と診断の手引き」の略称です。

分類と診断ね。

初版である「DSM-Ⅰ」が作成されたのが1952年。

現在は第5版である「DSM-5」が発表されています。

DSM-5

DSMのおかげで、精神疾患の分類はより客観的になり、診断のばらつきも少なくなりました。

どんな特徴があるの?

というわけで、今回はこのDSMをくわしく見ていきましょう。


DSM以前

DSM以前の診断

DSM以前の精神疾患の診断は、医師の主観の影響が大きく、客観性に乏しいという限界をもっていました。


クレペリンの分類

クレペリン

E. Kraepelin 出典:Wikipedia


クレペリンは、精神疾患の原因に注目する考え方「病因論」にもとづき精神疾患を以下の3つに分類しました。

  1. 外因性
  2. 内因性
  3. 心因性

外因性
外部環境から加えられた身体要因(脳の損傷や服薬)により生じた症状。

内因性
遺伝的な身体要因によって生じた症状。

心因性
身体要因ではなく、心理的な要因によって生じた症状。

でも実際、完全な原因の特定って難しいよね。

さらには、「内因性で、なおかつ心因性でもある」など原因が複数にまたがる場合も考えられます。

このように、病因論では厳密な分類はむずかしく、現在は積極的に使われていません。


病態水準

境界例レベル

病態水準」とは、精神症状の「重篤さ」を3レベルに分類する方法です。

しかし正確なレベルの測定は困難で、分類には不確定さが伴います。

そのため現在、病因論と同じで言葉としては使いますが、学術的には積極的に用いられていません。

あわせて読む

病態水準わかりやすく
病態水準をわかりやすく。精神症状の「重篤さ」の3レベル

「病態水準」の解説。

続きを見る


DSMによる診断


そこで生まれたのが「DSM」。

DSMは、「症候論」にもとづく分類をします。

症候論ってなに?

症候論とは、「観察できる症状」により精神疾患を分類する考え方。

つまり定められた各症状をチェックし、該当する症状が規定数以上あれば、その精神疾患が診断されるという仕組みです。

これを「操作的診断基準」というよ。

DSMでは統一した診断を可能にすることを目指しています。


最新版のDSM-5の特徴

アメリカ精神医学会

最新版である「DSM-5」が、アメリカ精神医学会発表されたのが2013年。

DSM-5では、精神疾患を22のカテゴリーに分けて解説しています。

なお、4版までとの大きな違いは、

  • 多軸診断を廃止した。
  • 「広汎性発達障害」を廃止。「自閉スペクトラム症」として整理。

という点です。

この2つは大きな変更として注目を集めたんだ。

参考:高橋三郎・大野裕監訳
DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル


ICDという診断基準

ICD

DSM以外の精神疾患の分類マニュアルとしては、WHO(世界保健機構)が発表している「ICD」があります。

正式名称は、「International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)」

日本では、「国際疾病分類」とも呼ばれてるよ。


DSMとICDの違い


DSMとICDの中身はどう違うの?

DSMとICDの違いとして挙げられるのは、

  • ICDは精神疾患だけの分類ではない。
  • (病気全般)

  • 病因についても触れている。

といった点です。

現在は、1990年に発表された第10版『ICD-10』が用いられています。

ICD-10

30年前って若干古くないですか?
WHOは第11版『ICD-11』を2018年に公表してるんだよ。

現在ICD-11は、世界各国で病名など国内適用に向けた準備が進められています。


まとめ~DSM~

エディプスコンプレックス抑圧

最後にもう一度「DSM」のポイントをまとめます。

DSMのポイント

DSMとは、

  • アメリカ精神医学会が作成
  • 精神疾患の分類・診断マニュアル

DSMの特徴は、

  • 症候論にもとづく(×病因論)
  • 観察可能な症状に注目
  • 客観的である
  • 操作的診断基準
  • =該当症状が規定以上かチェック


DSMが目指すのは、

  • 統一した診断を可能にすること

DSM-5の特徴は、

  • 多軸診断を廃止した点
  • 広汎性発達障害を自閉スペクトラム症に整理した点

以上、DSMについての解説でした。



ご参考にさせていただいた書籍



本日がみなさまにとって、すばらしい一日でありますように。

最後までお付き合いありがとうございました。

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