心理学用語
PTSD(post traumatic stress disorder)
心的外傷後ストレス障害
※正しい発音はこちら
(Cambridge University Press)
「PTSD」とは、死にそうなほどの恐怖を体験し、それによって様々な身体的・精神的な症状が現れる疾患です。
日本語では、「心的外傷後ストレス障害」と訳されます。
というわけで、今回はこの「PTSD」を理解するために、
この記事でわかること
- PTSDとは?
- PTSDの症状
- PTSDへの援助
をご説明していきたいと思います。
PTSDとは?
PTSDは、「激しい恐怖感や無力感を感じる外傷体験」によって発症します。
どんな体験かというと、
- 事故や災害などで重症を負う。
- 人が死んでしまうのを目撃する。
- 性的暴力を体験する。目撃する。
などの生命を脅かすほどの恐怖体験とされています。
PTSD診断の条件
トラウマ体験から、症状が1ケ月以上続いた場合に「PTSD」は診断され、1ケ月未満の場合は「ASD(急性ストレス障害)」としてこれを区別します。
さらにPTSDの症状が3ケ月以上続いた場合「慢性」、3ケ月未満の場合「急性」と診断されます。
注目されたPTSD
PTSDは、ベトナム戦争の帰還兵が生死の極限状態を体験し、その後も無力感や絶望感を訴えたことで世界の注目を集めました。
日本でも、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件をきっかけにPTSDは注目されるようになりました。
PTSDの症状
DSM-5では、PTSDの主な症状は以下の4つとされています。
- フラッシュバック(再体験)
- 過覚醒
- 回避行動
- 否定的な信念
フラッシュバック(再体験)
トラウマ的な出来事をあたかも現実に起こっているように感じ、再体験することを「フラッシュバック」といいます。
通常の記憶を思い出す場合と違い、急に想起され、体験する感情が当時とほとんど変わらないという特徴があります。
過覚醒
過覚醒では、交感神経の亢進がみられる状態で、過度な警戒心・不眠・イライラ・集中が困難になったりします。
「亢進(こうしん)」って?
高ぶって進むこと。「低下」の反対として用いる。
回避行動
回避行動とは、トラウマ的な出来事に関する記憶、感情、思考、またはそれらを想起させるような場所や人などに対し目をそむけ、避けることをいいます。
否定的な信念
「否定的な信念」とは、「自分は悪い人間だ。」「誰も信用できない。」「世界は危険でしかない。」といった自己や他者、世界への否定的な信念で外傷前にはなかったものをいいます。
また、トラウマ的な出来事の原因や結果についてのゆがんだ認識を持つといった認知の変化も見られます。
PTSDの援助
PTSDの援助としては、症状や経過に対する適切な心理教育がまず挙げられます。
どんな症状が予期されるか患者自身が知り、改善への期待を育成することが重要になります。
ほかには、恐怖の対象となる刺激へのエクスポージャーを行うこともよくあります。
また、PTSDを対象とした認知行動療法である「EMDR」が近年注目されています。
EMDR(Eye Movement Desensitization of Reprocessing)は、心的外傷体験を想起しながら、治療者の指の運動を目で追うことで、弛緩状態を作り出す方法です。
▼EMDRが分かる動画
また子どもの場合は、「遊戯療法」が有効とされています。
アウトリーチ
実際の災害時にPTSD援助として重要視されたのが「アウトリーチ」です。
相談室でクライエントを待つだけでなく、臨床心理士が被災地に直接出向き、積極的にかかわっていくことは、疾患の早期発見と介入を可能にしました。
まとめ
最後にもう一度「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」のポイントをまとめます。
PTSDのポイント
PTSDとは、
- 生命を脅かすほどの強烈な危機を体験または目撃し、その経験によって身体的・精神的な症状が現れること。
PTSDの症状は、
- フラッシュバック(再体験)
- 過覚醒
- 回避行動
- 否定的な信念
ASDとの違い、
- 症状が1ケ月以内はASD
- 1ヶ月以上ならPTSD
PTSDの援助は、
- 早期の心理教育
- 認知行動療法
- EMDR
- 遊戯療法(子ども)
以上、「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」についての解説でした。
ご参考にさせていただいた書籍
本日がみなさまにとって、すばらしい一日でありますように。