心理学用語
depressive disorder
うつ病
bipolar disorder
双極性障害


両方とも持続的な「気分の変調」によって困難が生じる病気です。
10人に約1人が発症するとされる、とても身近な病気です。



症状
症状として現れる「気分の変調」には、「著しい気分の低下」と「著しい気分の高揚」の2種類があります。
低下の状態を「抑うつエピソード」、高揚の状態を「躁(そう)病エピソード」といいます。
そして各エピソードが以下のように現れます。
●双極性障害では、
2つのエピソードを繰り返す。
●うつ病では、
抑うつエピソードのみを経験する。
「抑うつエピソード」とは?
「抑うつエピソード」にあらわれる精神的な症状と、身体的な症状については以下の通りです。
抑うつエピソード
●精神症状
・気分の落ち込み、興味や喜びの喪失、自責感・無価値感など
●身体症状
・不眠、睡眠障害、疲労感、食欲の変化など
抑うつ気分は朝に最も強く、夕方にかけてやや回復していくケースがよくあります。

また、活動ができない自分に対する自責感から、自分を追い詰め「自殺念慮」を抱くこともあります。
「自殺念慮(ねんりょ)」とは、
死にたいと思い、自殺について思い巡らす事。自殺願望、希死(きし)念慮などとも言う。
「躁病エピソード」とは?
「躁病エピソード」の精神的な症状と、身体的な症状については以下の通りです。
躁病エピソード
●精神症状
・気分の高揚、過活動、観念奔走、易刺激性・誇大妄想など
●身体症状
・不眠、睡眠障害、食欲の増加、性欲の増加
躁病エピソードは、エネルギーが充満しあふれている状態で、多動・多弁・金銭の無駄遣いなどもみられます。
また自分で異常に気付かず、病識がないことが多いというのも特徴の一つといえます。
「観念奔走(ほんそう)」とは、
次々と考えが浮かび、話が脇道にそれるため、全体としてまとまりがなくなること。
「易刺激性(いしげきせい)」とは、
些細なことですぐに不機嫌になる性質のこと。
原因
うつ病・双極性障害の原因は、はっきりと特定できてはいません。
ここでは原因とされる代表的な説をご紹介します。
脆弱性ストレスモデル
「脆弱性ストレスモデル」とは、遺伝的にもつ中枢神経の脆弱性に過度なストレスが加わることにより発症するという説です。

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モノアミン仮説
「モノアミン仮説」とは、うつ病の原因を神経伝達物質(セロトニンなど)の分泌異常と考える仮説です。
モノアミン(monoamine)とは、
アミノ基を1個含む分子。ドーパミン・セロトニン・ノルアドレナリン・アドレナリンなどの神経伝達物質。
求められる援助
主な援助方法
うつ病と双極性障害へのおもな援助方法としては以下の通りです。
●躁病エピソードでは、
薬物による鎮静。
●抑うつエピソードでは、
休養と薬物療法と認知行動療法。
薬物は抗うつ剤(SSRIなど)による、セロトニンの促進が主な効果となります。

休養は気分・体力を回復させる効果があります。

認知行動療法では、自己評価の低下によりすべてを悲観的にとらえる認知の歪みを、現実的なものに置き換えていく効果が期待できます。
援助の注意点
この病気の最大の注意点は、「自殺」です。
自殺念慮が強い場合は、入院による対応も視野に入れる必要があります。
また「励ましは禁物」とされ、頑張りたくても頑張れない人を追い込んでしまう可能性もあります。
抑うつエピソードで、さまざまな興味が喪失していている場合、「気晴らしをすすめることも有効でない」こともあります。

そのため家族への心理教育はとても重要です。
患者さんの状態を家族にしっかり説明し、励ましや気晴らしではなく十分に休養をとり回復を待つことが最も重要という理解が非常に大切になってきます。
まとめ

最後にもう一度「うつ病・双極性障害」のポイントをまとめます。
うつ病・双極性障害のポイント
うつ病と双極性障害は、
- 持続的な「気分の変調」によって困難が生じる病気
2つの気分の変調、
- 低下の状態が「抑うつエピソード」
- 高揚の状態が「躁病エピソード」
- 双極性障害は両方を繰り返す。
- うつ病では抑うつエピソードだけ。
原因は、
- 未だ特定されてはいない。
代表的な仮説は、
- 脆弱性ストレスモデル
- モノアミン仮説
など
求められる援助は、
- 躁病エピソード⇒薬物(鎮静)
- 抑うつエピソード⇒休養・薬物・認知行動療法
注意する点、
- 最大の注意点は自殺
- 抑うつ時「励ましは禁物」
- 抑うつ時「気晴らしも有効でない」
- 家族への心理教育
- 十分に休養をとり回復を待つ
以上、「うつ病・双極性障害」についての解説でした。
ご参考にさせていただいた書籍
本日がみなさまにとって、すばらしい一日でありますように。
