心理学のキホン

投影法のメリットとデメリット。大学院試験に出る代表的検査4選

2021年9月26日

投映法

心理学用語

projective technique
投影法

投影法(投映法)では、「あいまいな刺激」に「自由な反応」をしてもらいます。

投影法の手順

●絵を見せる↓


ロールシャッハ・テスト

このインクのしみ(あいまいな刺激)が何にみえますか?

ん~人の顔かなー。(自由な反応)

●何枚か見せて結果を分析。

このように投影法は、自由度が高く正誤や優劣が付けづらい課題をつかって、性格特徴を把握しようとする検査です。

なお、投影法は以前お話した心理アセスメント(査定)のツール一つという位置づけです。

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今回は「投影法」を理解するために、


投影法

  • メリットとデメリット
  • 代表的な投影法検査4選

をご説明していきます。


投影法のメリット

メリット

まず投影法のメリットをまずは考えてみましょう。


無意識なこともわかる

局所論「無意識」

投影法で得られる自由な反応には無意識的側面が反映されやすくなります。

質問紙法の逆だね!


回答の歪みが生じにくい

正しさ

投影法の課題は、それにどんな意味があるのかよく分からないので、なるべくよく見せようとしたり虚偽や誇張をすることが難しいのが特徴です。

つまり、検査の意図が読み取られにくく、回答のバイアスが生じにくいのも投影法のメリットです。

また質問紙法の逆だね!


投影法のデメリット

デメリット

次は投影法のデメリットを考えてみましょう。


主観的な解釈になりがち

主観的解釈

投影法は自由な反応を読み解いていくため、どうしても解釈に検査者の主観が入ります。

また検査者によっての解釈の違いも生じやすくなります。

これまた質問紙法の逆だ!


集団実施がむずかしい

精神分析

投影法は1対1で行うことが多いため、集団実施がむずかしいというのも、デメリットといえます。

また逆だよ!


検査者の熟練が必要

女性カウンセラー

投影法の結果は検査者の実施・解釈によって左右される可能性が往々にしてあります。

そのため投影法は、検査者の熟練が必要だといえます。

投影法の特徴って質問紙法とほぼ逆なんだね。


被験者にとって負担大

局所論「前意識」

投影法では、課題で何を測られているかわからないので被験者は不安になってしまうという欠点があります。

また選択肢でなく自由な回答を求められるという点でも心理的な負担が大きいと言えます。

状況によっては中断せざるを得ない場合もあるよ。


言語能力がある程度必要

投影法では反応を報告してもらうことが多いため、一定の言語能力が必要といえます。

ただし、描画法(描画投影法)を用いることでこのデメリットはカバーすることができます。

じつは描画法は投影法の一種なのです。

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代表的な投影法検査4選

局所論まとめ

今回は院試でもよく出る代表的な投影法検査、

投影法 4選

  1. ロールシャッハ・テスト
  2. TAT(主題統覚検査)
  3. P-Fスタディ
  4. SCT(文章完成法)

この4つをご紹介していきます。


ロールシャッハ・テスト

ロールシャッハ・テスト

ロールシャッハ・テストはスイスの精神科医、ロールシャッハが開発した検査。

インクのしみ(インク・ブロット)が何に見えるかを答えてもらい、その反応内容を分析します。

検査では、白黒5枚、カラー5枚の図版を使用します。

判断方法は、日本では「片口法」が主流でしたが、最近では「包括システム(エクスナー法)」も普及してきています。


TAT(主題統覚検査)

心理カウンセリング

TAT(主題統覚検査)」は、マレーモーガンが開発した投影法検査です。

検査では、カードに書いてある絵から物語を創作してもらうという方法で行います。

TATはマレーが提唱した「欲求-圧力理論」に基づいていて、

マレーの欲求-圧力理論

  • 主人公の行動=欲求
  • 周囲の出来事=環境からの圧力

このように解釈します。

図版30枚と白紙1枚の計31枚からなり、被験者に応じて図版を使い分けます。

子ども用のCAT・高齢者用のSATが存在します。

ロールシャッハ・テストと比べると判定方法の研究は少なく、そこまで判定方法も確立していないんだ。


P-Fスタディ(絵画欲求不満テスト)

ふきだし

P-Fスタディ」は、ローゼンツァイクが開発した投影法検査です。

Pはピクチャー、Fはフラストレーションの頭文字で、「絵」で「欲求不満耐性」を測定する検査になります。

やり方は、欲求不満の場面が書かれたマンガのような絵の吹き出しに、セリフを書き入れてもらい、それを分析します。

欲求不満の場面のイメージ


今日は、一緒に帰れなくなったんだ。

・・・・・・・

↑ここにセリフをいれてください。


絵は全部で24枚です。

反応の傾向を、他責・自責・無責の方向と、障害優位・自我防衛・要求固執の型で分類し、その人の特徴を解釈していくんだ。


SCT(文章完成法)

情報収集

SCT(文章完成法)」では、「わたしは子どもの頃…」みたいな未完成な文章の後半を自由につくってもらう方法で検査をおこないます。

文章理解と作文能力が必要なので、児童以上に用いられます。

投影法でありながら意識的側面が反映されやすいため、回答の歪みも生じやすいというデメリットがあります。

反面、前意識レベルを明らかにする検査であることはメリットです。

テストバッテリーの一貫として使われることが多いんだ。


まとめ~投影法~

空

最後に、投影法のポイントをまとめてみます。

投影法まとめ

▼検査の概要

  • 曖昧な刺激を与え、自由な反応を得る。
  • 自由な反応から性格から性格を把握。
  • ▼メリット

  • 測定水準:無意識まで測定。
  • バイアス:回答のゆがみ生じにくい。
  • ▼デメリット

  • 客観性:解釈が主観。解釈のズレ。
  • 集団実施:むずかしい。基本は1対1。
  • 熟練:実施、分析ともに熟練が必要。
  • 所要時間:長時間(負担大)。
  • ▼代表的な検査

  • ロールシャッハ、TAT、P-Fスタディ、SCT
  • なお、投影法と質問紙法は互いに欠点を補い合ってくれるので、テストバッテリーとしてよく用いられます。

    以上、投影法についての解説でした。


    ご参考にさせていただいた書籍



    本日がみなさまにとって、すばらしい一日でありますように。

    最後までお付き合いありがとうございました。

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