心理学の歴史

20世紀あたらしい心理学3大潮流。行動・ゲシュタルト・精神分析

2021年3月13日

19世紀。ヴントは心理学を一つの学問として確立させました。

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そして、それがアメリカで「構成心理学」と「機能心理学」に発展していきます。

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しかし、19世紀の心理学はあくまでも「意識」を中心とした心の理解。次第にとらえきれない現象も報告されます。

そんな時期にうまれた、

  • ゲシュタルト心理学
  • 精神分析学
  • 行動主義心理学

の3つは、19世紀へのアンチテーゼとして、20世紀の3大潮流に成長していきました。

今回は、この3つの心理学の、

  1. はじまり(論文・本)
  2. いつ(発表された年)
  3. どこで(国)
  4. だれが (著者)
  5. どんな内容(19世紀との違い)

を手がかりに、その「なりたち」をいっしょに確認してみましょう。

ゲシュタルト心理学

  1. 論文『運動視の実験的研究』
  2. 1912年
  3. ドイツ
  4. マックス・ヴェルトハイマー
  5. 要素よりも「全体性」を重視

1912年『運動視の実験的研究』の発表はゲシュタルト心理学の発端とされます。

ヴェルトハイマーはこの論文のなかで「仮現運動」を提唱します。

マックス・ヴェルトハイマー

出典:Max Wertheimer 1880-1943(Wikimedia

カゲンウンドー?どういう意味ですか?
踏切の点滅を思い出してみて。

踏切はただランプが交互に光っているだけなのに、光は「右左右左右・・・」と、まるで左右に動いているように感じます。

これが仮現運動です。

仮現運動

いってみれば、「人は物理的運動が生じていないのに、運動を知覚している」ということがいえます。

これは、人が刺激を単純に知覚しようとする傾向があるためで、ヴェルトハイマーはこれを「プレグナンツの法則」としました。

ゲシュタルト心理学は19世紀にあった要素研究ではなく、「全体」で心を理解しようとしたのでした。

精神分析学

精神分析

  1. 書籍『ヒステリー研究』
  2. 1895年
  3. オーストリア
  4. ジークムント・フロイト
  5. 意識よりも無意識を重視

精神分析的な研究はフロイト(とブロイアー)が書いた「ヒステリー研究」(1895)が端緒とされます。

フロイト

出典:Sigmund Freud 1856–1939(Wikipedia

この本では、「抑圧された考えを言語化することで病気を改善する方法」などが語られました。

さらに「精神分析」という言葉をはじめて使った翌年の論文では、「自由連想法」を紹介します。

自由連想法とは、心に浮かぶままの自由な考えを連想していく発想法で、潜在意識つまり無意識から心理的抑圧を解明しようとしました。

精神分析学

出典:フロイトによる構造論(Wikipedia

フロイトのもとにはアドラーやユングも集まり(のちに離反)、それぞれ独自の心理学を発展していきます。

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それまでの意識の研究とはちがい「無意識」を理解しようとした精神分析学は、20世紀に心の臨床という分野を切り開いていきました。

行動主義心理学

  1. 論文「行動主義者のみた心理学」
  2. 1913年
  3. アメリカ
  4. ジョン・ワトソン
  5. 主観(内観)ではなく客観を重視。

1913年発表の「行動主義のみた心理学」は行動主義宣言ともとれるようなワトソンの論文です。

出典:John Broadus Watson 1908-1921(Wikimedia

行動主義とは

心理学が科学であるためには客観的なものでなければならず、意識を内観する方法は間違いである。刺激と反応の関係をあきらかにして、行動を予知できるような法則をみつける必要がある。

とする考えで「意識なき心理学」ともいわれました。

パブロフの条件づけに影響をうけておこなった「アルバート坊やの実験」が有名です。


出典:Little Albert experiment 1920(Wikipedia)

しかし、人間を機械のようにあつかうことなどで批判をうけ、1930年代には新しい「新行動主義」がうまれ発展し、のちの認知心理学にもつながっていきます。

このように、行動主義は19世紀の主観的な内観をやめて、客観を重視した心理学として20世紀に大きな流れとなったのでした。

まとめ

19世紀の心理学への批判が20世紀にあたらしい心理学を生み、それが大きな流れとなりました。

ポイントをまとめると以下の通りです。

20世紀3大潮流のポイント

ゲシュタルト心理学

  • 心を要素でなく全体でとらえる。
  • ヴェルトハイマーが創始者。
  • 仮現運動を発見。
  • プレグナンツの法則を提唱

精神分析学

  • 心を意識でなく無意識でとらえる。
  • フロイトが創始者。
  • 自由連想法を提唱。
  • 心理臨床に多大なる貢献。

行動主義心理学

  • 心を内観ではなく客観でとらえる。
  • ワトソンが創始者。
  • アルバート坊やの実験が有名。
  • 批判から「新行動主義」発展。

哲学でも古くから行われていた心の探求。

19世紀にはじまった科学的なアプローチは、それをさらに加速させました。

そして20世紀。

3つの心理学のように、探求は無意識の世界に足を踏みいれていきます。

その後の心理学も技術の進歩とともにさらに発展しますが、それはまた別の機会に。

以上、20世紀はじめ頃の心理学ついてのお話でした。


ご参考にさせていただいた書籍



本日がみなさまにとって、すばらしい一日でありますように。

最後までお付き合いありがとうございました。

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